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夜想曲 作品28(タールベルク) [タールベルク]

さて、今日も昨日に続いて、
ショパンやリストと同時代に生きたピアニスト、
タールベルクの作品を紹介してみよう。

その前に、ちょっとだけ、タールベルクについて、おさらいしておこう。
(前にも書きましたが・・・)

・生まれは、1812年です。(リストは、1811年、ショパンは、1810年)
・貴族の家で、あのフランツ・リストと、ピアノの演奏で、勝負して、引き分けた。
    (ピアノの勝負なんて、この時代の芸術家は、いいなあと心から思う。)
・両手の親指で旋律をとり、空いた手で、幅広いアルペジォを弾く奏法が必殺技!
    (3本の手を持つピアニストと言われたそうな・・・)
・作品としては、なんと言ってもオペラのパラフレーズが中心
    (というより、元来がピアニストなので、そんな曲しか作曲していない)

まあ、基本的にピアニストであり、
自分が、ピアノを弾くために曲を作曲したのが多く
音楽史に歴史を残すような、革新的な曲や、
新しい構成、和声、リズムなどの曲を作曲したかというと、
それは、皆無かもしれない。

でも、ロマン派の時代に生きた作曲家として、
ピアノと言う楽器を知り尽くしたピアノ曲を多く書いている。
時代とともに、忘れられて、
今でも、あまり、録音されないのは、残念だ。

主な作品は、
「何々の主題による幻想曲」
とか
「何々の主題による奇想曲」
などの、パラフレーズものが多い。

このへんのジャンルの曲は、確かに、
どれも、同じような手法と展開だけど、
美しさ、流れるような展開、素直さなどは、リストより上だ。
まあ、アクがないのが、長所かもしれないし、短所かもしれない。
(リストとタールベルクが作曲した、ノルマの主題によるピアノ曲を比べると
 おもしろいです。タールベルクの方が、華麗で素直で、聞きやすいです。
 でも、リストの方が、ドキドキ感があります。)

まあ、タールベルクのパラフレーズものは、
この音楽日記でも、いままで、何曲か、書いてきたので、
今日は、純粋なピアノ曲を書いてみよう。
(ただ、音源は、少ないので、ナクソスで聞けるものを選んでみよう)

今日の音楽日記は、タールベルクが作曲した、
ピアノの小品 夜想曲 です。

静かな和音の導入部に続いて、
いかにも、ロマン派と言える旋律が、歌われる。
この旋律は、情感たっぷりだし、
微妙な和声進行はないけど、
聞くぶんには、とてもいい。
そして、お約束だけど、旋律は中声部に移り、
装飾されていく。
他のタールベルクの曲に比べると、
全然バリバリの曲ではないけど、
ロマン派の佳曲としては、悪くない。
ただ、なにか、一つ足りない感じもする。

まったく無名の曲だ。
ショパンの夜想曲と比べて、微妙な情感は乏しいかもしれない

しかし、別に、将来も、いつまでも、弾かれて欲しい
と思って、作曲したわけではないかもしれないし、
サロンで、優雅に弾くためだけに作曲したのかもしれない。

確かに、ショパンやリストやシューマンなどは、
当時としては、革新的なピアノ曲も作曲している。

その差は、あるにせよ、タールベルクの
美しい、ピアノ曲は、もっと紹介されてもいいとは思う。

こういう曲を聞くたびに、時代の流れを感じるのです。
作曲者の思いは、どこにあるのだろう・・・

ということで、次回も、普通には、
マイナーな作曲者のマイナーなピアノ曲の紹介です(誰かな?)



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なるたる

私は常々思います。
どうしてタールベルクの自作曲(オリジナル)が編曲(パラフレーズ・トランスクリプション)に比べて、あれ程精彩を欠くのかと…。

つまりは、彼の音楽の才能が「既に在る」ものを変化させ、発展させる方向には力を発揮することは出来たけど、全くの無から形のあるものを作り出す力には乏しかった、と言うのが厳然たる事実のようです。

ですから編曲の手法、聴く者を虜にする旋律美、曲想の巧妙さ、装飾音の華麗さ、全体的な説得力と言う意味では、少なくともリストより遥かに優れている場合が多い。
リストの場合は、ややもすると曲全体が無意味でグロテスクな技巧の見せ場に堕してしまい、収拾がつかなくなります。
そこにその装飾音がある必然性が全く感じられず、単なる腕試し、聴く者にとっては、こけおどしの、とってつけたような、底の浅い、上っ面だけの音楽に過ぎないと感じられる場面が多々ありすぎます。

私は正直言ってリストのオリジナル曲は評価しませんけど(ピアノソナタですらそうです)、それでも、革新的な技術を織り込んだオリジナリティがあることは認めざるを得ません。
腐っても鯛なのですね。

翻ってタールベルクは編曲の分野でしか生き残れない人物だと思います。
彼のオリジナルで私の評価出来る曲は、唯の1曲もありません、悲しいけれど…。

良くも悪くもリストは、時代の変革者です。
リストが後世まで残り、タールベルクが時の彼方に消え去って行ったことは、決して故ないことではないのです。

唯、私はこうした消え去って行った者に対して限りない愛着を持つ臍曲がりであるので、タールベルクの編曲音楽には深く深く魅せられています。

追記。
リストの「ノルマ」は、どう見ても、タールベルクのそれの上を行きます。
これは「ドン・ジョバンニ幻想曲」と並んで、リストとしては、珍しく成功した数少ない例だと思います。
曲の構想の雄大さはタールベルクなどを軽く凌駕しています。
by なるたる (2009-02-02 21:37) 

みどりのこびとちゃん

やっぱり、そうでよね。
タールベルクのパラフレーズ以外の作品は、
確かに、精彩を欠きますよね。

ノルマは、タールベルクもがんばっていると思うけど・・・


by みどりのこびとちゃん (2009-02-02 22:32) 

なるたる

イギリス国歌「God save the Queen」の主題による幻想曲(だっけか…)は、素晴らしい曲です。
右手の装飾音が「神」です。
by なるたる (2009-06-10 19:39) 

ラン

確かになるたるさんの仰る通りですね・・・

ですが、年齢を重ねると何故かタールベルクのノルマがとても弾きたくなり、今必至で彼の編曲楽譜を探しています。

もし、購入方法がお分かりでしたら是非とも教えて下さい。

by ラン (2009-10-29 13:08) 

なるたる

ランさん。
お初にお目にかかります。
国内で入手可能なタールベルクの編曲楽譜でしたら、このブログでも偶に投稿いただく、レアピアノ曲の楽譜出版の第一人者、エディションガミのガミさんこと、坂上雅樹氏がオーソリティです。
私のタールベルクの楽譜は、全てエディションガミから購入しました。
ただし、最近はタールベルクの新たな楽譜の出版はありません。
残念ながらノルマはありませんし、坂上氏自身もこれ以上タールベルクの新たな楽譜の出版を手がける気はないようです。
坂上氏は最近ベトナムへ移住されたようですし、気まぐれに当ブログへ投稿された時にお願いしてみるしかないようです。
外国での出版状況は私にはわかりません。
by なるたる (2009-10-29 20:14) 

みどりのこびとちゃん

ランさん、コメントありがとうございます。
タールベルクの楽譜は、パブリックドメインなので、IMLSPのページから
ダウンロードできます。
http://imslp.org/wiki/Category:Thalberg,_Sigismond
です。
その中に、ノルマ があります。
というより、ほとんどのタールベルクの曲がありますが・・・




by みどりのこびとちゃん (2009-10-29 21:10) 

なるたる

こんなものがあるなんて知りませんでした。
凄い!
by なるたる (2009-10-29 23:44) 

みどりのこびとちゃん

なるたるさんは、当然この IMSLPの事を知っていたと思ってました。
もっと、早く紹介すればよかったですね。
話によると、権利関係で、一回閉鎖になったものの、
その後、パブリックドメインを中心に再開したようです。
個人的には、絶版の楽譜は、このような形をとってほしいです。


by みどりのこびとちゃん (2009-10-30 00:38) 

なるたる

いやあ、これ凄いです。
著作権切れでパブリックドメインになった作曲家のものだったら何でもありじゃないですか。
有名・無名、ポヒュラー・レア曲落とし放題ですね。

実は以前あそびの音楽館の管理人さんにシューマンのゲノフェーファを紹介したところ、気に入られたみたいで、調子に乗って「編曲希望」、と挑発してみたんですよ。
管理人さんはフルスコアからしか編曲しないポリシーなのですが、市販のフルスコアはものすごく高いし、ネット上でダウンロード出来るなんて勿論知らなかったので、「こりゃ無理かな」と諦めていたんですが、これなら簡単にダウンロード出来るしお金も掛からない。
早速紹介してみます。

もしかしたら、序曲と気に入った何曲かは編曲してもらえるかもしれない。
素晴らしいものを紹介いただき深謝いたします。
と言うか、IMSLPの存在って、常識なんでしょうか?

by なるたる (2009-10-30 08:36) 

みどりのこびとちゃん

IMSLPが、有名か、無名か、となると、よくわかりません。
結構、知っている人は、いるとは、思いますが・・・
ただ、私は、タールベルクなどの知らない楽譜を見て、
驚愕したことは、覚えています。
本当に、マイナーな作曲家の楽譜が見れて、すごいです。
パブリックドメインになった絶版の譜面は、このような形でないと、
まず、見ることは、出来ないでしょうね

by みどりのこびとちゃん (2009-10-31 00:15) 

なるたる

あそびの音楽館の管理人さん、IMSLPのことは当然ながらご存じでした。
以前にもゲノフェーファのフルスコアを探しに行って、見つからなかったので諦めていたらしいです。
今回もファストからの情景やらいろんなスコアが追加になっていたのでビックリしてました。
日々更新があって、いっぺんにどっと曲が追加になるらしいですね。

ゲノフェーファの序曲、そのうち編曲してもらえることになりました。

by なるたる (2009-10-31 12:33) 

みどりのこびとちゃん

なるたるさんと、あそびの音楽館の管理人さんとの
コメントのやりとりは、読みましたよ。
いやいや、内容の深い会話です
なるたるさんの情熱には、すごいものが感じられます

by みどりのこびとちゃん (2009-11-01 16:12) 

なるたる

あそびの音楽館にとうとうシューマンの「ゲノフェーファ」序曲がUPされました。
出来栄えは言わずもがなです。
よろしければ、どうぞ。
by なるたる (2009-11-30 00:32) 

みどりのこびとちゃん

最近、ゆっくり音楽を聴く時間がないので、
結構、いらいらしています。
このコメントを書きながら、
あそびの音楽館の「ゲノフェーファ」序曲を聴いていますが、
いやいや、ここの管理人さんは、趣味とはいえ、本当にすごいです。
よくぞここまで、編曲して、音源を作れるなあと・・・

最後まで、ひきこまれると思います
by みどりのこびとちゃん (2009-11-30 23:56) 

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