ピアノソナタ ハ短調 作品56(タールベルク) [タールベルク]
本年も、『みどりのこびとちゃんのクラシック音楽日記』よろしくお願いします。
さて、新年最初の曲、
最近は、その年の記念の作曲家を書いている。
今年2012年、最大の話題は、
なんといっても、作曲家タールベルク生誕200年であることだろう。
世界の各地で、タールベルクの音楽が流れ、
記念の演奏会、そして、未発見の曲の演奏など、
いろいろな行事が計画されている・・・
ははは、そんな訳ないですよね。
確かに今年は、タールベルクの生誕200年だけど、
一般的には、タールベルクって、無名だし、
知られているのは、あのリストと、ピアノ対決した人
ということで、
作品にいたっては、あんまり知られてないなあ。
以前、紹介した『埴生の宿変奏曲』なんて、
すごくいい曲だと思うのだけどなあ。
ということで、まあ、新年最初の曲にしては、無名な曲ですが、
ちょっと付き合ってくださいね。
今日の音楽日記は、今年 生誕200年を迎える
タールベルクの作曲した、『ピアノソナタ ハ短調 作品56』です。
その前に、ちょっとだけ、タールベルクについて、おさらいしておこう。
(前にも書きましたが・・・)
・生まれは、1812年です。(リストは、1811年、ショパンは、1810年)
・貴族の家で、あのフランツ・リストと、ピアノの演奏で、勝負して、引き分けた。
(ピアノの勝負なんて、この時代の芸術家は、いいなあと心から思う。)
・両手の親指で旋律をとり、空いた手で、幅広いアルペジォを弾く奏法が必殺技!
(3本の手を持つピアニストと言われたそうな・・・)
・作品としては、なんと言ってもオペラのパラフレーズが中心
(というより、元来がピアニストなので、そんな曲しか作曲していない)
基本的にピアニストであり、
自分が、ピアノを弾いて聴衆に聴かせる曲が中心です。
そんなタールベルクが、ピアノソナタを一曲だけ作曲しています。
曲は、4楽章からなり、約30分程度かかる大曲です。
第1楽章
序奏のあと、すぐに出る第一主題は、悲愴的で情熱的な
これぞロマン派という旋律ですし、
第二主題は コラール風
タールベルクらしく、主題は、右手だったり、左手だったり
あきさせません。
(でも、3本の手奏法は出てきませんよ)
2楽章
アレグレットで、スケルツォ風の6/8の楽章です。
(というより、舟歌のような雰囲気もありますが・・・)
この楽章の聴きどころは、なんといっても、
途中のオクターブでの旋律と左手のアルペジォがかっこよく
からんで、フォルテで弾かれる所ですね
この部分、スケルツォぽくないけど、
タールベルクらしく派手でいいです。
第3楽章
アンダンテの変奏曲
符点を強調した旋律は、ちょっと行進曲かな
ある意味、一番タールベルクらしい。
伴奏は、いたるところにでてくるし、
対旋律も、右手左手といろいろ変わる
最後の方では、お得意の中音が旋律、伴奏が、低音と高音パターンもでてきます
でも、派手でないのは、やはり、ピアノソナタということなのかな。
第4楽章
華麗な序奏のあと、
16分音符がと堂々たる第一主題がでます。
この楽章は、ピアノを思いっきり鳴らしています。
そして、コーダもかっこいい
もちろん、ピアノソナタとしての構成力や展開を言われれば
ちょっとかもしれないけど、
ロマン派のピアノソナタとしては、聴きやすいし、
なかなかです。
さて、もし、当時の聴衆が、
リストのピアノソナタとタールベルクのピアノソナタを
聴いたらどう思うだろう。
もちろん、タールベルクのピアノソナタの圧勝だと思う。
リストのピアノソナタは、
当時にはきっと革新的すぎています。
でも現在では、リストのピアノソナタは、ピアノ音楽の傑作として
残っているけど、
このタールベルクのピアノソナタは、
全然弾かれないし、きっとほとんどの人が知らない。
まあ、時代の流れというのは、そういうものだろう。
でも、タールベルクのピアノ曲は、やはり、オペラパラフレーズの方がいいかな
しかし、IMLSPで、タールベルクの楽譜を見ながら
こんなマイナーな曲を動画サイトで聴けるというのも、
昔では考えられなかったなあ・・・
さて、今年は、マイナーな作曲家で始まったけど
いつものように、今年の抱負です。
・このブログをちゃんと書くこと。(100記事/年 が目標です)
・マンドリンオケの演奏会。(今年も2つです)
・趣味の作曲・編曲・演奏の別館ブログの立ち上げ
(これですね、昨年中に準備できたのです。多分近日公開。乞うご期待)
・でもやっぱり、健康第一
(最近、疲れっぽくなったのです)
・今年は、なんにでも、手をだしてみようかと
(去年と違ったことをひとつ書こうと思って・・・)
とにかく、皆様、今年もよろしくお願いします。
夜想曲 作品28(タールベルク) [タールベルク]
ショパンやリストと同時代に生きたピアニスト、
タールベルクの作品を紹介してみよう。
その前に、ちょっとだけ、タールベルクについて、おさらいしておこう。
(前にも書きましたが・・・)
・生まれは、1812年です。(リストは、1811年、ショパンは、1810年)
・貴族の家で、あのフランツ・リストと、ピアノの演奏で、勝負して、引き分けた。
(ピアノの勝負なんて、この時代の芸術家は、いいなあと心から思う。)
・両手の親指で旋律をとり、空いた手で、幅広いアルペジォを弾く奏法が必殺技!
(3本の手を持つピアニストと言われたそうな・・・)
・作品としては、なんと言ってもオペラのパラフレーズが中心
(というより、元来がピアニストなので、そんな曲しか作曲していない)
まあ、基本的にピアニストであり、
自分が、ピアノを弾くために曲を作曲したのが多く
音楽史に歴史を残すような、革新的な曲や、
新しい構成、和声、リズムなどの曲を作曲したかというと、
それは、皆無かもしれない。
でも、ロマン派の時代に生きた作曲家として、
ピアノと言う楽器を知り尽くしたピアノ曲を多く書いている。
時代とともに、忘れられて、
今でも、あまり、録音されないのは、残念だ。
主な作品は、
「何々の主題による幻想曲」
とか
「何々の主題による奇想曲」
などの、パラフレーズものが多い。
このへんのジャンルの曲は、確かに、
どれも、同じような手法と展開だけど、
美しさ、流れるような展開、素直さなどは、リストより上だ。
まあ、アクがないのが、長所かもしれないし、短所かもしれない。
(リストとタールベルクが作曲した、ノルマの主題によるピアノ曲を比べると
おもしろいです。タールベルクの方が、華麗で素直で、聞きやすいです。
でも、リストの方が、ドキドキ感があります。)
まあ、タールベルクのパラフレーズものは、
この音楽日記でも、いままで、何曲か、書いてきたので、
今日は、純粋なピアノ曲を書いてみよう。
(ただ、音源は、少ないので、ナクソスで聞けるものを選んでみよう)
今日の音楽日記は、タールベルクが作曲した、
ピアノの小品 夜想曲 です。
静かな和音の導入部に続いて、
いかにも、ロマン派と言える旋律が、歌われる。
この旋律は、情感たっぷりだし、
微妙な和声進行はないけど、
聞くぶんには、とてもいい。
そして、お約束だけど、旋律は中声部に移り、
装飾されていく。
他のタールベルクの曲に比べると、
全然バリバリの曲ではないけど、
ロマン派の佳曲としては、悪くない。
ただ、なにか、一つ足りない感じもする。
まったく無名の曲だ。
ショパンの夜想曲と比べて、微妙な情感は乏しいかもしれない
しかし、別に、将来も、いつまでも、弾かれて欲しい
と思って、作曲したわけではないかもしれないし、
サロンで、優雅に弾くためだけに作曲したのかもしれない。
確かに、ショパンやリストやシューマンなどは、
当時としては、革新的なピアノ曲も作曲している。
その差は、あるにせよ、タールベルクの
美しい、ピアノ曲は、もっと紹介されてもいいとは思う。
こういう曲を聞くたびに、時代の流れを感じるのです。
作曲者の思いは、どこにあるのだろう・・・
ということで、次回も、普通には、
マイナーな作曲者のマイナーなピアノ曲の紹介です(誰かな?)
12のエチュード 作品26(タールベルク) [タールベルク]
99%クラシック音楽が好きな人だと思う。
(私の会社の物好きな友人は、クラシック音楽をまったく聞かないのに、
この音楽日記を読んでいる・・・なんでだろう)
クラシック音楽を聞く人では、上手い下手は、とにかく、
自分で、なにかの楽器を弾く人(歌の場合もあるかも)も多いかもしれない。
ただ、クラシック音楽を聞く人で、自分で弾く為でも、編曲でも、作曲でもいいのだけど、
譜面を書く人は、どの程度いるのだろう
うーん、わからないなあ。
あまりいない気もするし、そうでもない気もするし、・・・・
私は、趣味(もちろん、ど素人です)で、編曲や作曲をするのが好きなので、
常に五線紙と向き合っている気がする。
会社にもっていくカバンの中にも、
常に五線紙は、必需品だ(えっ・・・)
最近、譜面をパソコンで、書く人が多い。
確かに便利だ。
書いた音は、再生してくれるし、
移調は、すぐできるし、
綺麗だし、
コピペも自由自在だし・・・
私も、時々、パソコンで譜面を書いている。
でも、でも、でもですね、
古い人間って、言われてもいいのだけど、
私、譜面は、鉛筆で実際に五線紙に、書くのが好きなのです。
なにがいいかって
・パソコンがなくても、どこでも書ける(重要)
・なんか、音符一つ一つに魂がこもる気がする。(気だけですが)
・譜面が、汚くても、書いた人の心情が伝わる(綺麗な方がいいかも)
・書いていると、写経と同じで落ち着く(笑)
ははは、どれも大した理由ではないですよね
しかし、実筆で書いた譜面には、
その人のなにかの力が感じられるのですよ。
ということで、大作曲家の実筆譜は、写真を見るだけでも、興味深い。
バッハ・・・綺麗です。
モーツァルト・・・いかにも楽しそう、速書き
ベートーベン・・・むっちゃ、汚いけど、魂がこもっていそう。
リスト・・・うーん、リストという譜面?
ブルックナー・・・几帳面です。
等々
いやはや、どれも、個性的だ。
さて、ちょっと前に、楽譜屋で楽譜を見ていたら、
タールベルクの実筆のファクシミリの譜面が売っていた。
タールベルクの譜面は、最近は、結構ネット上で見ることができるけど、
実筆では、どんな譜面を書いていたのか、
今まで知らなかった。
(まあ、もちろん、マイナーなせいもありますが・・・)
ということで、ちっとだけ高かったけど、
おもしろそうなので、購入してしまった。
(でもセール品だったので、半額だったです)
(フュゾー社の譜面ですね)
それが、今日の音楽日記の曲です。
今日の音楽日記は、タールベルク作曲の
12のエチュード 作品26 です。
タールベルクについては、過去記事を参考にしてくださいね。→こちら
さて、曲は、12曲からなる練習曲です。
(買った譜面は、後半6曲だけだけど、この再、12曲まとめて紹介しよう)
(ちなみに、この曲の音源もっていないので、適当に、音をピアノで出しただけです。すいません)
第1曲・・・最初の練習曲から、右手の1と2の指が、主旋律ですね。最後の方は、左手も、1と2の指。
第2曲・・・左手がアルペジォ。右手がオクターブの旋律。うーん、なぜか普通の曲かな
第3曲・・・右手が、動き回り、左手の1と2の指が、主に主旋律
第4曲・・・プレストでの早い和音の連打の練習。連打、連打、連打
第5曲・・・16分音符のアルペジォが、右手にいったり、左手にいったり
第6曲・・・プレストで、この音型を弾くのは、至難かも。指がつりそう
第7曲・・・これは、タールベルク得意の、中声部で、旋律、あとは、伴奏の練習
第8曲・・・おっと、ずーーーーと、右手も左手もトレモロだ。体力勝負か?
第9曲・・・ショパンの練習曲にもありそうな、スッタカートの練習。
第10曲・・これは、もう、必殺3本の手奏法の練習かな
第11曲・・同じ音型が、ずっと続く練習曲っぽい曲。ただ、手が大きくないと、弾けませんよ
第12曲・・右手が、16分音符の大きなアルペジォ、その中に旋律。左手伴奏。
特に、際だったリズムも、和声もない。
ショパンやリストのエチュードと比べると、
芸術的価値?は無いかもしれない。
この曲集のいいところは、
練習曲を練習すると、必殺の3本の手奏法が、
ある程度マスターできるしくみだけかもしれない
でも、思うのです。
ピアノ演奏で、リストのライバルだった
タールベルクは、どんな気持ちでこの曲集を書いたのだろう
実筆の譜面のこのエチュードの写真を見ると、
とても几帳面に書いてある。
リストに負けまいと、まじめに練習をしているタールベルク・・・
俺は、この奏法を完全にマスターするんだ。
なんて、姿が、この譜面から見えたりする。
そんな気持ちが、見えてくる(勝手な想像ですよ)
ちなみに、曲の最後の二重線をタールベルクは、
くにゅくにゅくにゅと、ぎざぎざぎざって、書くのがクセみたいです(笑)
さて、
譜面を書かない人へ
たまには、写しでいいので、五線紙に譜面を書いてみましょうよ。なかなか、落ち着きますよ
譜面をパソコンで書く人へ
たまには、鉛筆で、おもいっきり五線紙に書いてみましょうよ。違った力で、書けるかも・・・
今日の音楽日記は、いったいなにを書いているのやら・・・
【夏の名残りの薔薇】による変奏曲 作品73(タールベルク) [タールベルク]
今日は、前回に続いて、アイルランド民謡の【夏の名残りの薔薇】を基にしたピアノ曲だ。
今日の音楽日記は、ロマン派のリスト最大のライバルと言われた、
ピアニストでもあり、作曲家でもある タールベルクが作曲したピアノ曲。
【夏の名残りの薔薇】による変奏曲 作品73である。
タールベルクは、自分自身がピアニストだった為、
数多くの演奏会用のピアノ曲を作曲している。
そして、必殺技は、【三本の手奏法】だ。
まあ、いろいろと、以前の音楽日記でも、書いているので、
興味のある人は、そちらも、参考にしてください。
【埴生の宿】による変奏曲 作品72
【ユグノー教徒】による変奏曲 作品20
(しかし、タールベルクのファンって、日本にどのくらいいるのだろうか?)
さて、【夏の名残りの薔薇】による変奏曲 である。
これがまた、タールベルクらしい、優雅で、洗練された曲に仕上がっている。
曲は、単音で、どことなく寂しく始まり、
下降する、きらめくスケールの後、
【夏の名残りの薔薇】の主題が、しみじみと優雅に歌われる。
そして、半音階の中、これまた、主題が優雅に歌われる。
この半音階なのだが、派手さはなく、どこまでもタールベルクの世界だ。
(リストの半音階の伴奏は、大抵、嵐のようになるのですけどね・・・)
そして、和音のパッセージの中、主題が歌われ、
次第に盛り上がり、曲は、そのまま、フォルテで終わる。
時間にして、5分足らずの小品だ。
音楽的に見れば、主題は、まったくといっていいほど、変奏されず、
主題を取り巻く伴奏形のみを変化させている。
【埴生の宿】による変奏曲 に比べると、必殺の【三本の手奏法】もなく、
派手さはない。
しかし、【夏の名残りの薔薇】の主題を変化させることなく、
これほど洗練された曲もなかなか書けないとも思う。
当時のサロンで、タールベルクが弾いたら、それはそれは、受けただろうなあ
そんな雰囲気を想像するだけでも楽しいものだ。
聴いていて、夏の終わりには、ぴったりの曲だ。
さてさて、この曲の欠点と弱点は、なんだろう?
それは、音源が少ないことかも知れない。
プロのピアニストの皆さん、アンコールにでも弾きましょうよ。
いいと思うのだけどなあ・・・
マイヤベーアの【ユグノー教徒】による幻想曲(タールベルク) [タールベルク]
さて、今日は、リクエスト?にお応えして、
タールベルクのピアノ曲だ。(また、マイナーな・・・)
タールベルクという作曲家(ピアニスト)を知っているだろうか?
あのフランツ・リストと、ピアノで決闘したという話が有名な人物だ。
今でこそ、いろいろなCDで、この作曲家のピアノ曲は、多く聴けるが、
(ナクソス・ミュージック・ライブラリでも、かなり聴けます)
昔、レコードの時代には、ポンティが録音した、レコードしかなかった気がする。
(失われた調べを求めて、というLPのシリーズで、アントン・ルービンシュタイン、
リャプノフ、バラキレフ、モシュレス、クララ・シューマン 等々、無名曲が宝のようにあって、
私は、いっぱいレコードを買い集めましたね。・・・ああ、懐かしい)
タールベルクのピアノ曲としては、
この日記の過去記事で、【埴生の宿による変奏曲】を取り上げたこともある。
(タールベルクの特色に関しては、そちらを参照してくださいね)
昔買ったレコードには、最後に、オペラの編曲ものが入っていた。
それが、今日の音楽日記の曲
マイヤベーアの【ユグノー教徒】による幻想曲 である。
曲は、静かに始まる。そして、付点リズムの歌になるが、
すでにここで、両手での装飾だ。しかし、あくまで控えめだ。(技術的には難しそうだ)
右手オクターブの連打での歌の部分では、左手は、対旋律と伴奏だが、
こんな部分もとても優雅だ。
中間部のコラールは、徐々に盛り上がり、
その後は、お約束の早いスケールやトリルで、さらに盛り上げ、
後半の圧倒的な、終結部に突入する。
(この部分は、さすが、リスト最大のライバルと言われた面目躍如かな)
さて、タールベルクのピアノ曲は、
リストに比べて、洗練された仕上がりの曲が多いと思う。
リストのオペラ編曲ものは、傑作もあれば、駄作も多いといった感じだが、
タールベルクのオペラ編曲物は、華麗なスケール。キラキラしたトリル。
そして、必殺の三本の手奏法(左右の親指で旋律を取り、幅広いアルペジォで装飾する)。
等々、聴いていて、まことに気持ちがいい。
ただ、その分、ぶっ飛んだトンデモ曲は無いかなあ。
しかし、洗練された美しさと歌は、リストより上で、
もうちょっと、それでの評価は、されてもいいとも思う。
タールベルクは、51歳で、公の演奏から引退し、余生は、葡萄づくりに励んだそうだ。
自分の芸術に限界を感じたとの説もあるらしい。
しかし、作品は、残っている。
でも、今でもタールベルクを弾くピアニストは、少ないなあ。
ちょっと悲しいかも・・・
「埴生の宿」による変奏曲(タールベルク) [タールベルク]
皆さんは、タールベルクという作曲家を知っているだろうか?
一般的には、まったく無名だが、
技巧的なピアノ曲を好む人には、よく知られている(かな?)
さて、タールベルクとは。
・貴族の家で、あのフランツ・リストと、ピアノの演奏で、勝負して、引き分けた。
(ピアノの勝負なんて、この時代の芸術家は、いいなあと心から思う。)
・両手の親指で旋律をとり、空いた手で、幅広いアルペジォを弾く奏法が必殺技!
(3本の手を持つピアニストと言われたそうな・・・)
・作品としては、なんと言ってもオペラのパラフレーズが中心
(というより、元来がピアニストなので、そんな曲しか作曲していない)
・タールは、谷。 ベルクは、山。の意味がある。
(平和な谷であり、いつかは高い山になるようにの願いをこめて付けられた)
同時代に生きたリストは、オペラのパラフレーズ以外に、
いろいろなジャンルにわたって、作曲を行い、現在でも幅広い人気があるのに比べ、
タールベルクの作品は、自分の演奏会の為に作曲し続けたオペラのパラフレーズ
がほとんどの為、現在では、あまり知られていない。
そんなタールベルクの代表作は、間違いなく、
「埴生の宿」による変奏曲 だろう。
(うーん、庭の千草による変奏曲 もすてがたいのだが・・・)
「埴生の宿」(ホーム・スイート・ホーム)の曲は、
間違いなく旋律を聴けば、「ああ、あの曲か」とわかると思う。
(しかし、歌詞まで付けて歌える人は、どのくらいいるのだろう???)
この旋律が、優雅に奏され、次第に高揚し、
タールベルクの必殺技である、三本の手の奏法が、炸裂する。
4分少々の曲だが、本当にピアノの表現力を最大限に生かした曲だと思う。
よく知っている優雅な旋律が、こんなに派手になるのも驚きだが、
複雑な和声があるわけでなく、聴いていて、嫌みが無く、気持ちがいい。
とはいえ、一流のピアノ名曲かといえば、
なにかが足りない気がするのも確かである。
(いえいえ、ちょっとそんな気がするだけです。)
この曲のCDは、あまり多くないが、ピアノ好きは、聴いて損はないと思う。
しかし、タールベルクの曲は、粒のそろったスケールがちゃんと弾けないとさまにならない。
スケール練習はしない(おいおい)いい加減な私のようなピアノ弾きには、
谷ではなく、高い高い高い山である。(笑)