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幻想曲(シューマン) [シューマン(ロベルト)]

さて、前回は、シューベルトのピアノソナタを書いた。
シューベルトのピアノソナタは、最近やっと、そのよさが少しは、わかってきた気がする。
シューベルトのピアノソナタとお友達になるのも、結構、時間がかかったが、
実は、シューマンのピアノ曲も私は、かって、苦手であった。

かって、と書いたが、実は、いまだにこの作曲家のピアノ曲で苦手な曲もある。
(断っておきますが、苦手というのは、弾くのが苦手ということではありません。
 聴くのが、苦手という意味です。私のピアノの腕では、とてもとてもシューマンの曲
 は弾けません(笑))
例えば、いまだに、どうもなじめないピアノ曲の中に、
傑作と言われている【クライスレリアーナ】がある。
まあ、この曲のことは、また次の機会に書きます。

シューマンのピアノ曲のどんなところが、苦手なのだろう?
過去の音楽日記で、ちょっとだけ書いたことがある→こちら

まあ、同じロマン派のショパン、リストに比べて、表現が直接的でなく、
ピアノの派手さもなかったので、そう感じたかも知れない。
ただ、最近、シューベルトと同じで、
(もちろん、音楽的に、感覚的には、シューベルトとは違いますが)
なんとなく、この作曲家の個性というか、精神というか、狂気?というか、なんとなく、
感じられるようになってきて、結構おもしろくピアノ曲が聞けるようになってきた

そんなシューマンのピアノ曲だが、最初の頃、クラッシック音楽を聴き始めて
ピアノ協奏曲は、すぐ好きになった。
が、もう一曲、早い時期から、好きになった曲がある。
(それでも最初は、とっつきにくかった曲でした)

それが、今日の音楽日記の曲
シューマン作曲のピアノ曲【幻想曲】である。

では、いつものように、いい加減な解説をしてみよう。

第1楽章の始まりは、左手の16分音符のアルペジォに乗って、
右手オクターブで、朗々と歌う旋律で始まる。
なんということのない下降旋律だか、この部分を聞いただけで、
引き込まれる。これから始まる物語を期待させてくれる。
さすが、シューマン。
その後、いろいろ展開され、あきさせない楽章だ。
しかし、表面的な音楽では決してないとも思う。
音楽の裏では、夢と幻想が入り乱れ、
なにかに、取り憑かれている気分も見え隠れする。
(この楽章の途中の 伝説の歌と呼ばれる部分や、最後のゆっくりした部分は、
 なにをいいたいのだろう、とつい考えたくなってしまうのです。)

第2楽章は、いきなり、フォルテシモで始まる堂々たる行進曲だ。
(ハイ、これは、ウソですね。そう感じるかもしれませんが、
 実は、譜面上は、メゾフォルテで始まります(笑))
この楽章は、シューマンならではの楽章で、リズムに支配されている。
というより、堂々たる行進曲に見えるのだが、見方を変えると、なんで、
そんなに付点に執着するの? 実は夢と幻想の中の行進か?とも、思えてくる。
(どうでもいいのですが、この曲の最初の左手の和音は広くて、アルペジォになって
 しまいます。私なんぞは、がツンとオクターブで左手を弾きたいと思うのですが、
 それだと、リストの音楽になってしまいますね ハイ)
しかし、最後のコーダの手の跳躍は、難しいと思うなあ。速度は速いし、フォルテだし・・・

第3楽章は、美しい歌だ。同じ作曲者のアラベスクや、花の歌 等を連想する。
しかし、この楽章も、表面は、美しく聞こえても、
裏には、結構、複雑な感情が入り交じっている楽章だと思います。

この曲には、外面的な華やかさ、そして美しい歌、そして構成美もあるが、
私には、シューマンの【夢と幻想】が見えてしかたない。

シューマンは、この第1楽章に対して、クララにあてて
『私が書いたもの野中で、もっとも情熱的なもの』
とも
『貴方に対する悲歌』
とも書いている。
これからも、複雑な感情が見え隠れする。

この幻想曲は、リストに進呈されている。
それに対して、リストは、あの有名な自作のピアノソナタを、お返しとして、
シューマンにささげている。
リストのピアノソナタは、初演時から、
「気品高く美しい」とか「支離滅裂」だとか、いろいろと議論がある曲だ。
(今でも好き嫌いが、はっきり分かれる曲ですね)

このシューマンの幻想曲は、そんなに議論されないし、好き嫌いもない曲かもしれない。
しかし、私は、シューマンのこの【幻想曲】こそ、いろいろな良い意味で、
気品高く美しく、しかしちょっと支離滅裂で、外面的で、内面的で
でも、ちゃんと構成もしっかりしていて、そんな矛盾を多く含んだ
夢と幻想の世界のピアノ曲ではないかと、最近ちょっと思っているのです。
(ははは、自分でもなにを書いているか、わからなくなってきた。
 そこがこの曲の、いいとこ(笑))

リスト、ショパンに比べて、この音楽日記は、シューマンの出番が少なかった。
これからは、クララと共に出てもらおう。


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なるたる

シューマン、久々にキターw。
しかも傑作幻想曲だぁ。

シューマン大好きな私としては、ショパンやリストの扱いに比べて、取り上げられる頻度の少ないシューマンが可哀想でなりませんでした。
せめて今の倍くらいは紹介して頂きたかった…。
これからはピアノ曲だけではなく、あらゆるジャンルに亘る紹介を切に希望いたします(特に合唱曲)w。

さて幻想曲であります。
これ以前にも書きましたけど、私のシューマンのピアノ曲ではベスト3に入る曲です。
仰るように、シューマンは夢と幻想を糧として自らの音楽を紡ぎだした人でした。
シューマンの音楽が一般的に分りにくいと言うのは、同時代の他の作曲家に比べて誰よりもこの夢と幻想の度合いが強く、暫しその狂気と紙一重の情念に作品が覆い尽くされて、一見晦渋で混乱した印象を与えるからに他なりません。
要は理解するのに努力の要る作曲家なのです。
音楽の美しさの裏にある何とも言えないドロドロ感・ゾワゾワ感、人間の根源にある禁忌の部分、見ても口にしても行けない、でも皆が知っている秘密の部分…こう言うものを:一見ロマンチックな糖衣でくるみつつ露わにしたのが彼の音楽なのです。

ロマン派と言う時代は、形式よりも個人の自由で奔放な感情表現を第一義的に考え、それを如何に表現するかに腐心した時代だったと言えます。

シューマンはそう言う意味では、まさにロマン派の申し子なのです。
しかもそれをマイナスのベクトルにまで拡大して見せた。
見たくもないもの見せられた、存在の深遠を覗き見るような不快感、困惑、混乱…。

誰よりも幻想的であれ、誰よりも夢を見よ(良くも悪くも)…そんな想いが凝縮したのが彼のピアノ曲であり、幻想曲はその代表格と言って良いかもしれません。

因みに私の投稿している掲示板には、シューマンのスレッドがあり、私も柄にもなく熱く語っております。
幻想曲や、私も苦手なクライスレリアーナについての書き込みもありますので、宜しかったら覗いてみてくださいw。
by なるたる (2008-01-18 21:46) 

みどりのこびとちゃん

熱いコメントをありがとうございます。なるたるさん。
なかなか、語ってくれますね。
これから、シューマンは、多く登場予定です。(多分)

クライスレリアーナが苦手でよかったです(笑)
私、実は、シューマンの交響曲も苦手なのです

掲示板読みました。
みんなの熱い思いが伝わってきます。
すごいです
by みどりのこびとちゃん (2008-01-18 23:37) 

Cecilia

今日の記事でご紹介したCDに「クライスレリアーナ」とラヴェルの「鏡」が収録されています。
NMLで聴けますがお聴きになられましたか?
私はかなり気に入りました。
OEHMSレーベル、なかなか良いものが多いです。

私はシューマンの歌曲が苦手です。
それに比べればピアノ曲などのほうが・・・。

そういえばユーゲントアルバムの「サンタクロースのおじいさん」は娘達に人気が・・・。(全然サンタという雰囲気がないですね。)
by Cecilia (2008-01-20 12:53) 

みどりのこびとちゃん

Cecilia さん。コメントありがとうございます。
記事は、読みました。
まだ聞いていないのですが、今日の夜にでも、聞いて見ようと思います。
てもきっと、クライスレリアーナは、私は、苦手なんだろうなあ・・・

私は、歌曲は、そんなに聴いていないせいか、
シューマンの歌曲の方が、ピアノ曲より、スムーズに聴けるのですが(笑)

ユーゲントアルバムは、ときどき、ピアノの上に譜面を出して
遊んで弾いています。(簡単なものだけだけど・・・)
by みどりのこびとちゃん (2008-01-20 14:48) 

なるたる

最近、シューマンの幻想曲の室内楽版(カップリングはシューベルトさすらい人幻想曲の室内楽版)と言うゲテモノのCDを入手し聴きました。

ピアノは一切使わず、弦楽器のみの演奏ですが、どちらも案に相違して立派な室内楽として楽しく聴けました。

メロウな響き・ロマンチックな雰囲気と言う点では原曲以上で、思いの外美しく魅力溢れる曲でした。
by なるたる (2008-01-23 22:35) 

みどりのこびとちゃん

幻想曲の室内楽版!!!
うーん、それは、興味深いです。
どんな風に聞こえるのだろう・・・
買いそうです。ハイ
by みどりのこびとちゃん (2008-01-25 00:00) 

なるたる

紹介はこんなところです。

http://blog.jeugia.co.jp/umeda.php?itemid=1331

希少版で今でも入手可能かどうかわかりません。
私は確かアリアCDで入手したような気がします。
by なるたる (2008-01-25 01:04) 

なるたる

正確には弦楽オーケストラ版ですね。
by なるたる (2008-01-25 01:07) 

みどりのこびとちゃん

聴いたら感想入れます。ハイ
しかし、ゲテモノのようだが、まともな室内楽になりそな気もする
by みどりのこびとちゃん (2008-01-27 00:02) 

ピアノフォルテ

シューマン、最近周辺に弾かれる方が多くて、なんでだろう・・・
幻想曲、素敵な曲だなあとはおもうのですが、重厚で幻想的で、ロマンティックでもあって。
でも、譜読みがいっこうに進みません。
ショパンがシューマンを評価していなかったというのが引っかかっているからかなあ・・・・
弾きたい!!という情熱が湧いて来ないです。
(単に指が回らないから?)
ピアノコンチェルトはちょっと魅かれます。
(これはとても難しすぎて弾けませんけど)
by ピアノフォルテ (2008-01-28 18:33) 

みどりのこびとちゃん

ピアノフォルテさん、コメントありがとうございます。
シューマン好きで、尚かつ、弾く方は、多いですよね。

そうですか、譜読みが進みませんか・・・
きっと、クララの心境にならないと、進まないかも(笑)
やっぱり、シューマンへの愛がないと・・・

ピアノコンチェルトは、私も好きですよ
by みどりのこびとちゃん (2008-01-28 23:13) 

なるたる

最近の私の妄想は、シューマンの幻想曲の第3楽章を、ベートーヴェンのピアノソナタ第32番の第2楽章と同じ情熱を以って情感たっぷりと弾き切ることです。
解釈は度外視して、テクニック的に辛うじて可能かな、などと身の程知らずな考えを持っています。
罰当たりですねw。

by なるたる (2009-03-02 22:30) 

みどりのこびとちゃん

なるたるさんの妄想は、なかなか、いいですねえ
32番の第2楽章と同じ情熱とは、これは、また目標が高い
がんばってください。

追記
 二重投稿は、訂正しておきました
by みどりのこびとちゃん (2009-03-04 00:51) 

はじめまして

あのぉ、御気にさわったらごめんなさいですけれども、この幻想曲の2楽章って、行進曲風でしょうかねえ。アルペジョ、シンコペーション、前打音のオン"パレード"ではあります。しかしそれはつまり、これではパレードないし行進の歩調はとうてい整わないということではないでしょうか…
 5小節目の音型はシベリウスのカレリアのア・ラ・マルチアを思い出せますね。しかしこちらは早足にはなっても歩調は乱しません…
 そうそう、Free scores.comでゲットした楽譜では、冒頭左手はもともとアルペジョです。そうでない楽譜もあるのでしょうか? "おしえてくん"で済みません。
 なるたるさん。やっぱり<後期ベートーヴェン+初期シューマン>が、西洋音楽の頂点をなすんじゃないでしょうか。むろんバッハ山も高いけれど…。
 NHK・FMではシューマンの第二番が終わったところ。でも交響曲って、にがて。
by はじめまして (2011-10-17 20:52) 

みどりのこびとちゃん

はじめましてさん、コメントありがとうございます。
うーん、行進曲でないといえば、そうかもしれません。
まあ、シューマン自身、この楽章の標題いろいろ変えていますからね。
最初のアルペジォは、手が大きく広げられれば、
(まあ、さすがにこの音符は無理ですが・・・)
アルペジォでなく、弾きたいところですね。
あの音の厚みが、きっと欲しかったけど、
独奏では、出来なかったということかも、なんて、勝手に思っています
by みどりのこびとちゃん (2011-10-18 23:07) 

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