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ピアノソナタ 第16番(第15番) ハ長調 K545(モーツァルト) [モーツァルト]

さて、音楽の世界には、誰が言い出したか、わからないが、
よく言われている伝説?のような話が数多く存在する。
下記の言い伝え?もそのうちの一つだろう。

質問「世界で一番難しいピアノ曲は、誰の何の作品ですか?」

回答「うーん、リストの超絶や、ラベルの夜のギャスパールバラキレフのイスラメイ
   ゴトフスキーの練習曲リゲティの練習曲・・・・いやいや、なんといっても、
   世界で、一番難しいピアノ曲は、モーツァルトのピアノソナタだよ」

多分、ピアノ好きなら、一度は、どこかで聴いたか、読んだことのある話だと思う。
(そうですよね)

あまのじゃくな私は、たいてい、こんな話は、ちょっと違うぞ、と思うのだが、
この話だけは、実は、半分は正しいのではないか、と思っている。

そりゃあ、譜面は、単純だし、指使いや、譜読みは、難しくない。
しかし、モーツァルトをピアノで弾くと、

 1.正確なテンポで、正確に音を間違えないで弾くだけではつまらない。
 2.かといって、感情を付けすぎると、かえって嫌みになる。
 3.そして、感情と理性のバランスをとろうとすればするほど、なぜか曲が
   おかしくバランスがくずれていく。
 4.そのうち、モーツァルトが世間では大天才ということになっているので、自分自身
   の曲の解釈に自信がなくなっていく。
 5.そして、それを見て、モーツァルトは、天国でお茶目に笑っている(笑)

ははは、多分こういうことだと私は、勝手に思っている。

そう、弾くのも難しいが、モーツァルトの音楽について書くのも難しい。

しかし、今日は、書いてみよう。
今日の音楽日記は、モーツァルトのピアノソナタの中でも、最もよく知られた曲、
ピアノソナタ 第16番(第15番) ハ長調 K545 である。
(あれ、トルコ行進曲付のソナタの方が有名かな?)

左手が、ドソミソ・ドソミソ と単純な伴奏をする上に、
右手が、ドーミソ・シードレド と、これまた単純な旋律を歌う曲である。
(さて、皆さん、もうこの曲はなんだかわかりましたよね)

作曲者自身が「初心者の為の小さなソナタ」と名付けられたこの曲は、
ピアノ学習者が必ずと言っていいほど、練習する。
演奏者は、純粋に弾くことに集中するが、
聴く方は、なぜか、その演奏には、違和感を覚える。

なぜだろう。

多分、この曲の音楽の楽しさ、美しさ、単純さ等は、
言葉ではいいあらわせないが
個人個人のイメージがすべて違うのだと思う。
これが、モーツァルトの難しいところだ。

さて、この曲を弾くには、何が必要だろうか?
もちろん、そんなことは、よく分からないが、
私は、今は、大人のジャズのリズム感と遊びが必要だと思っている。

そう、この感覚は、言葉では、言えない。
いろいろな音楽を聴き、音楽の楽しさが理屈ではなくなり、
年をとってもなお、無邪気で、お茶目な人のみが弾けるのではないかと勝手に思っている。

モーツァルトは、難しい・・・・・

さて、なぜか話が、真面目になってしまった。
では、この曲の面白い演奏を2つほど紹介しよう。

グルダというピアニストを知っているだろうか?
ジャズも弾く、ウィーン出身のピアニストだか、この人の弾いた、このハ長調ソナタは、
絶対に聴く価値がある。
そう、ジャズも弾くピアニストだけあって、リズム感と、ピアノの楽しさは、格別である。
しかし、この演奏の聞き所は、繰り返した時の主題の装飾である。
過剰すぎるというのが一般的な批評だが、リズムもまったく全然重くならず、
また、即興的なのに、何故か、モーツァルトの時代感覚に本当に合っている。
聴いたことの無い人には、驚く演奏だ
私は、名演奏だと思う。日本盤のCDも発売されているので、是非聴いてほしい。

さて、このハ長調ソナタを、あのグリーグ(ペールギュント作曲の人です)が、
2台ピアノ用に編曲した版があるのを知っているだろうか?
グリーグは、教育用に書いたと言っており、すばらしい作品になったとも言っている。
さて、この曲、一台は原曲そのままで、二台目のパートを書き足す形で編曲されている。
しかし、この二台目のオブリガート(対旋律)が結構くせものだ。

ははは、私には、この編曲は、とてもすはらしい作品とは、どうしても思えない。
これは、失敗だな。(グリーグさんごめんなさい)
モーツァルトにこの対旋律はないよなあ・・・・
この曲のCDは、1000円で入手出来るはずだ。
興味のある人は、聴いてみてくださいな。

確かに、モーツァルトの曲について書くのも、大変だ。


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コメント 9

Robert

K.545について興味深く読ませていただきました。素晴らしい文章です。確かにモーツアルトは難しいですね。「人がうまく弾けないのを楽しんでいる悪魔」とも言われていますね。グルダの演奏知っています。素晴らしいと思います。それと「無邪気でお茶目な人」のご意見にもうなづけます。ホロヴィッツが(確かこの曲だったと思うのですが)モーツアルトのソナタを弾いているのをTVで見ましたが、とても楽しそうで、弾き終わって「はいおしまい」という感じでピアノの蓋を閉めた顔がとても無邪気で子供のようでした。また私はアラウの演奏が好きですが、アラウの目は年をとってもまるで子供のように丸くてきれいでした。このように無邪気な気持ちでないと弾けないかもしれないですね。
by Robert (2006-07-13 23:42) 

Cecilia

またしても私の記事に合わせてくださったようでありがとうございます!
今日は中学の保護者会があり、いろいろと重い話を聴いてきました。(次女の練習には出かける前は付き合いましたが、あまり相手はできませんでした。)
非常に疲れていましたが、記事を拝見して「お茶目なモーツァルト」を思い何だか明るい気分になりました。ありがとうございます!
本当に上に書いてあること、納得です!
シャープやフラットなどの調号も非常に少なく、見た感じすごく単純で簡単そうなのに、楽譜の中には天上の音楽とでも思えるような甘美な喜びに満ちた世界が広がっているのです。
やはりこの曲からは木管楽器の響きやコロラトゥーラソプラノの軽やかな歌声が聴こえてきますね。
明日の直前練習は「楽しい気分」でさせたいな、と思いました。
by Cecilia (2006-07-13 23:52) 

Cecilia

グルダは、以前「気ままにクラシック」というラジオ番組(鈴木大介さんが司会)でヨハン・シュトラウスの演奏を聴きました。
非常に楽しい演奏でした。
by Cecilia (2006-07-13 23:55) 

みどりのこびとちゃん

Robertさん。コメントありがとうございます。
アラウの演奏も確かに、さらっとして、とてもいい感じですよね、
無邪気な大人という感じです。
あれっ、ホロヴィッツのこの曲の映像ってありましたっけ・・・
by みどりのこびとちゃん (2006-07-14 22:07) 

みどりのこびとちゃん

Ceciliaさん。ジャスト100niceありがとうございます。(笑)
娘さんのコンクールがんばって下さいね。
確かに、音楽には、楽しさが必要です。
楽しい気分で演奏するというのは、一番難しいのもしれませんが・・・
by みどりのこびとちゃん (2006-07-14 22:10) 

Robert

ホロヴィッツの映像はずいぶんと前のことでK.545だったか記憶が怪しいです。ニ長調のロンドK.485か他のソナタだったかもしれません。すみません。
by Robert (2006-07-14 22:19) 

ピアノフォルテ

この曲、私も昔発表会でひどい演奏をした覚えがあります。涙
今度息子が発表会(4月ですが)で弾きたいといってやり始めていますが、演奏してみるとほんとに難しいです。グリークの4手の演奏も最近私の先生が2台でされて、「へ~、おもしろいなあ」と思いました。
確かにちょっと無理のある旋律も入っていますね。
でも息子とやってみたいです。
(ちょうどなぜかうちにはアプライトとグランドピアノがあるので、背中合わせなうえにちょっと距離はありますがやろうと思えばできます。)
CDもあるのですね。良い情報ありがとうございました。
by ピアノフォルテ (2006-07-15 10:13) 

みどりのこびとちゃん

ピアノフォルテさん。コメントありがとうございます。
ピアノが2台ですか。うらやましです。
私は、アップライトと電子ピアノ(夜はこれでしか弾けませんね)だけですね
グリーグは、弾くのは、きっと楽しいと思います。
いいなあ、子供と2台で弾くのって・・・・
by みどりのこびとちゃん (2006-07-16 22:32) 

ピアノフォルテ

こびとさん、2台お持ちじゃないですか!
グランドを買うとき、消音つきのアプライトのほうは夜の練習用にと思って、手放せませんでした。ワインレッドで音も結構気に入っていましたし、背も低いので全く邪魔になりません。夜ゆっくり譜読みしたいときに活用しています。
by ピアノフォルテ (2006-07-17 00:03) 

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