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【さすらい人】幻想曲(シューベルト) [シューベルト]

うーん、今日の音楽日記も結局、ピアノ曲では、大曲の部類に入る曲になってしまった。

さて、シューベルトのピアノ曲というと、
愛らしい小品か、
技巧は前面に出さず、
すばらしい歌の旋律であふれた数々のピアノソナタかということになると思う。
そういう一般的なイメージから考えると、
今日の【さすらい人】幻想曲は、シューベルトのピアノ曲では有名な一曲だが、
一回聴くと、そのダイナミックスな音楽で、異質な曲と思えるかもしれない。

この曲は、実質的には4つの部分からなり、実質ピアノソナタと言ってもいいと思う。

曲は、フォルテシモの特徴的なリズムに始まり、
華麗な技巧を見せる第一楽章。
(この楽章は、16分音符とオクターブだらけですね)
この曲の題名ともなっている、自作歌曲【さすらい人】の変奏の二楽章
(この幻想的な音楽はすばらしい。
 でも、楽譜だけ見るととてもシューベルトとは思えない程、音が詰まってます)
スケルッオ風の三楽章。
(この軽い感じが次の部分につながりますね)
両手オクターブのフーガ風の豪快な始まり(ここ好きですね)
最後の盛り上がりも他のシューベルトのピアノソナタでは聴けない。
(いやあ、すごく盛り上がります。)

この曲には、シューベルトの好きなリズム
チャー・チャ・チャ チャー・チャ・チャ・・・・・・・
(歌曲さすらい人の最初のリズムでもありますね)
がすべての部分で出現する。
そういうことでは、統一感があり、あきさせない。(ちょっと、しつこいけど・・・)

しかし、そんな曲だが、絶対に外面的だけの曲ではないと思う。
シューベルトが自由に曲を書こうとして、
(この曲は、シューベルト自身が幻想曲と名付けています)
このようなピアノ技法が必要だったと思えるのです。
とにかく、シューベルトの歌と、ピアノ技巧が重なったたぐいまれな名曲かも知れない。
(こんなこと書いていて、しかし、ちょっとだけ、この結論に自信がない私(笑))

とにかく、シューベルト自身もまともに弾けなくて、
「こんな曲は、悪魔に弾かせろ」と言ったとか・・・

さてさて、こんな曲なのだが、面白い編曲がある。
このシューベルトの【さすらい人】幻想曲を知っている人は、
一回ぐらいは、聴くだけの価値はあるだろう。

それは、ピアノの魔術師フランツ・リストがこの曲を基に、
ピアノと管弦楽のためのピアノ協奏曲に仕上げた編曲作品だ。
この編曲は、曲の構成は、ほぼ変えていない。
最初、管弦楽で主題が提示され、ピアノが弱く入ってくる場所など、
シューベルトのピアノ協奏曲として、十分聴ける。
例えば、第2楽章のピアノと管弦楽の対比など、とても美しい。
また特徴的なリズムは、さらにいろいろなところで、強化されている。
所々、リストの対旋律も効果的だ。

さて、この編曲に対する意見はいろいろだ。
「巧妙の極み」(ツェルニー)
「感嘆すべき名曲」(ビューロー)という意見もあるし、
「原曲のスタイルをぶち壊している」
「シューベルトにピアノ協奏曲がないのは寂しいが、これはかけ離れている。」
という意見もある。

私は、どう思うか?

うーん。この曲の評価は、個人的にも難しいなあ。
リストのシューベルトの歌曲のピアノ独奏編曲は、結構、好きなのだが、
この【さすらい人】幻想曲のピアノ協奏曲編曲は、
シューベルトの音楽ではないし、リストの音楽でもない。
しかし、逆にシューベルトの音楽とリストの音楽の融合とも言える。
(ははは、何を言っているのかわからなくなってきましたね・・・)

そんなことを複雑に考えずに、
多分、原曲を知らずに、この作品だけを聴くと、とてもいい曲と思うのだが、
音楽は、難しいなあ・・・

まあ、暇な時にでも、みなさん聴いてみて、自分で感じてください。
(決して、自分の結論を逃げている訳ではありません・・・かな(笑))


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コメント 7

なるたる

さすらい人幻想曲は叙情家シューベルトにあるまじき技巧大炸裂の曲で、聴いていてその派手な演奏技巧には瞠目させられてしまいますね。
技巧の点ではピアノソナタの全てを楽々と凌駕して余りあります。
かといって技巧一点張りではなく、音楽としても内容のある傑作だと思います。勿論私も大好きです。
出だしからして派手派手でもう、ワクワクします。
その後の展開も胸のすく潔さで、シューベルト特有のためらい、逡巡、迷いといったものがなく、極めて男性的です。
私は特に最後の畳み掛けるようなクライマックスの部分が好きで、これも例の風呂場の鼻歌の1曲ですw。

リストの編曲はあまり加工していないせいでしょうか、管弦楽付きのピアノ協奏曲もどきと言った印象で特に感動もしませんでした。
何やらこの曲に対する遠慮が見られ、すっきりしません。
こんな編曲もあるんだ、くらいの感想です。
by なるたる (2007-06-11 02:42) 

なるたる

追記。
ピアノの腕前の下手糞なシューベルトには、この曲の完奏はやはり無理だったと思います。
by なるたる (2007-06-11 02:46) 

みどりのこびとちゃん

なるたるさん、コメントありがとうございます。
やはり、リストのこの曲の編曲は、遠慮が感じられますか・・・
私も同じ感想です。

どうせなら、いいか悪いかどうなるかわからないけど、
徹底的にリスト風に編曲したほうがよかったかも・・・
by みどりのこびとちゃん (2007-06-11 21:28) 

Robert

こんばんは。この曲のリスト編曲は残念ながら聴いたことがありません。この曲はシューベルトにしてはずいぶんと異質な曲のように感じていますので、リストという私にとってはどうも不可解な作曲家の編曲となると・・・でも最近はリストもよく聞いていますので機会があれば聴いてみようと思います。
シューベルトとしてでなく、一つの技巧的な曲としてきけばなかなか楽しめますね。特に終楽章なんか盛り上がりが凄いです。この曲を初めて聴いたのはポリーニの初来日のライブで、顔を真っ赤にして弾くポリーニの終楽章の音がホールじゅうに響いていたのを思い出します。
by Robert (2007-06-13 23:33) 

みどりのこびとちゃん

Robert さん。コメントありがとうございます。
ポリーニでのライブ演奏聴いてみたかったなあ。
しかし、なんか、和音も含めて、音がすべてよく、響く演奏だろうなあ、
と想像するだけで、うれしくなります。
by みどりのこびとちゃん (2007-06-15 00:11) 

Robert

ええ、音がすべて完璧に鳴っていましたよ。実はプログラムは当初シューマンのクライスレリアーナでした。直前に変更になりちょっとがっかりしていたのですがライブを聴いてなぜ変更したか納得してしまいました。(このときのポスターを帰りにもらったのですが、今でも大事にとってあります。たしか1976年でした。)
by Robert (2007-06-16 23:50) 

みどりのこびとちゃん

いいなあ。でも、ポリーニのクライスレリアーナも聴きたかったですね。
by みどりのこびとちゃん (2007-06-17 23:29) 

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